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インプラント治療は外科的な処置を伴うため、複数の禁忌が存在します。禁忌とはインプラントを受けることができない病気のことを言い、ガイドラインにも定められています。血液疾患は該当するのか気になる方もいることでしょう。
当記事では、血液疾患にかかっている方がインプラント治療を受けることは可能かまとめるとともに、事例なども 詳しく説明します。
関連ページ:インプラント手術ができない症状や習慣とは
参照元:【PDF】「口腔インプラント治療指針2020 検査法・診断からリスクマネジメントまで」|公益社団法人 日本口腔インプラント学会(https://www.shika-implant.org/publication/dl/2020_guide.pdf)
血液疾患は、血友病などの先天性血液凝固因子欠乏症や血小板減少性紫斑病、急性白血病、慢性白血病、貧血などが含まれています。口腔インプラント治療指針2020によると、出血のコントロールが困難な血液疾患や、治療による免疫抑制が強いと言われる血液疾患にかかっている場合は、インプラント関連手術の禁忌症とされています。
上記のような疾患にかかっていなくても、血液検査で異常が発見されたり健康診断で検査データについて指摘されたりしたことがある場合、歯科や内科などで相談するようにしましょう。身体状態に問題があって外科手術が困難だと指摘された場合、治療を優先させて状態が安定してからインプラント治療を検討してください。
参照元:【PDF】「口腔インプラント治療指針2020 検査法・診断からリスクマネジメントまで」|公益社団法人 日本口腔インプラント学会(https://www.shika-implant.org/publication/dl/2020_guide.pdf)
血液疾患であってもインプラント治療が受けられないわけではありません。例えば貧血の場合、症状や全身の状態によってはインプラント治療を受けることも可能です。血液疾患などの持病がある方は、インプラント治療を受けてもよいか医師に確認することが重要です。インプラント治療を受けたい場合、主治医やかかりつけの歯科に必ず相談するようにしてください。
前述した通り、貧血による症状がある方は、検査データや状態によってはインプラント治療ができる場合があります。フラップレスインプラントと呼ばれる方法は、メスで歯茎を切開せずに小さな穴をあけて、なるべく周りの組織を傷つけることなくインプラントを埋め込みます。フラップレス手術は、出血量も少なくて済むので負担を軽減しながら治療可能です。
血液疾患の中にはインプラント治療ができないケースがさまざまあるため、自己判断せず主治医に相談することが大切です。
参照元:【PDF】「口腔インプラント治療指針2020 検査法・診断からリスクマネジメントまで」|公益社団法人 日本口腔インプラント学会(https://www.shika-implant.org/publication/dl/2020_guide.pdf)
血液疾患のある65歳男性で、インプラント治療を行った事例を紹介します。
下顎左側歯の動揺が見られ、咀嚼障害の回復を希望し歯科を受診されました。高血圧症の既往歴があり、降圧利尿剤を内服している状況です。
手術にてインプラントの埋入を行いましたが、手術中にやや多い出血が確認されました。血圧は170/110mmHgと上昇が見られたためだと判断され、カルシウム拮抗薬であるアダラート10㎎を舌下投与しました。
その後、血圧が150mmHg-100 mmHg前後まで落ち着いたのを確認後、手術を続けました。しかし、歯肉弁や骨の表面、ドリルホールからの出血が通常よりも多く見られ止血が困難な状態に。この時点で止血機能の異常が疑われ、止血に重点をおいた処置を実施。止血剤と抗生剤を投与したり、電気メスで処置を行ったりして止血を実施しました。
帰宅後、手術を行った部位から多量の出血が見られたため救急車にて総合病院へ来院し入院。諸検査の結果、骨髄増多症候群に属する血小板血症と診断され、薬物療法のため入退院を繰り返したところ症状は落ち着きました。インプラントには影響は見られませんでした。
参照元:【PDF】「インプラント埋入手術後の異常出血で発見された原発性血小板血症の1症例」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsoi/14/2/14_307/_pdf/-char/ja)
血液疾患には、血友病などの先天性血液凝固因子欠乏症、血小板減少性紫斑病、急性白血病、慢性白血病、貧血などがあります。出血のコントロールが困難な血液疾患、治療による免疫抑制が強いと考えられる血液疾患にかかっている場合は、インプラント関連手術の禁忌症と言われています。
貧血には鉄欠乏性貧血や再生不良性貧血、悪性貧血、溶血性貧血などがあり日常的には鉄欠乏性貧血が多いとされています。日常生活に支障がない貧血であってもその程度によって術後さまざまな障害が発生する可能性があります。
出血性素因とは、自然に出血が起こりやすい状態です。
人の身体には、出血を止めるための機能として血小板や凝固因子などの成分が備わっています。何らかの理由でこれらの働きが行われなくなると出血傾向という「血が止まりにくい」状態になるとされています。このような状態にある場合、出血を伴うインプラント治療をするのは大きなリスクを伴うため、治療が難しいケースが多いです。
白血球系細胞が無限に増加してしまう病気のことです。貧血による疲れやすさや顔色の悪さ、めまい、息切れ、発熱などの症状が見られます。白血球が減少することによる肺炎や血小板減少に伴う歯肉出血や鼻出血など、さまざまな症状が見られるのが特徴。白血病の方は、出血を伴うインプラント手術はリスクが高いため禁忌とされています。
参照元:【PDF】「口腔インプラント治療指針2020 検査法・診断からリスクマネジメントまで」|公益社団法人 日本口腔インプラント学会(https://www.shika-implant.org/publication/dl/2020_guide.pdf)
白血病や血友病などの血液疾患がある方は、出血を伴うインプラント治療はリスクが高いことから禁忌とされています。
貧血など、血液検査や状態によってはインプラント治療を受けられるケースもあります。インプラント治療を希望する方は、今の状態で治療は可能なのか、主治医や歯科医師に必ず確認するようにしてください。